知っておくと便利なピアノ演奏の極意(3)
前の記事:知っておくと便利なピアノ演奏の極意(2)
みなさまこんにちは。未だ自粛生活が続いているかと思いますが、休日などいかがお過ごしでしょうか?
私は昔から町歩きが好きで休日は当てもなく外出する事が多かったのですが、感染症流行の影響で最近は専ら自宅で映画を見ている事が多いです。やはり傑作と言われている映画は色々な視点から楽しむことができるのが良いですね。昔の映画などは特に主役はもちろん脇役まで、その人物が持っているキャラクターを表す服装。タバコや酒といった嗜好品。車や自宅などに至るまでバックグラウンドがしっかりしていることが多いです。そういった細かい部分のクオリティが高ければ高いほど、様々な角度から映画の持つ世界観を楽しむ事ができるのでしょう。
いい響きとは?
前置きが長くなりましたが本題に移っていきたいと思います。
知っておくと便利なピアノ演奏の極意シリーズ最後の第③回目は響きの作り方の初歩についてお伝えしたいと思います。
第①回、第②回でご説明させて頂きました内容は、安定した音を出すための下準備とも言えます。実際の演奏では瞬間毎に違った音形、音色、強弱を用いて数多の音を演奏していかなければなりません。それらを心地よく聴かせる為には全ての要素が調和されている事が大切です。
演奏を調和するために大きな要因となっているのが響きのバランスの良さです。それが整っているだけで綺麗な響きが空間全体に混じります。映画と同じように、音楽も全体の調和の元、細かい部分にしっかりとした説得力があってこそ美しくなります。部分的に尖っていたとしても、全体がまばらだと本当に伝えたい部分の良さがいまいち伝わりづらくなってしまいます。
さて、理屈っぽい話になりますが、要するに音とは空気の振動になります。つまり、それらの振動同士のバランスが取れていれば違和感なく聴こえてきます。また、それぞれの振動がお互いを助け合うことにより豊かな印象も与えられます。逆に言えばバランスが悪いと貧相にもなりますし、何よりあまり綺麗に聴こえてこない事が多いです。ですので、どんな場面を演じる時でも貪欲に良い響きを求める必要があります。
良い響きを作る為には何よりも耳の働きが大切です。具体的には耳で想像し、耳で感じるということを意識できると良いでしょう。
色々なイメージはもちろん頭で膨らませるのですが、最終的な完成形のイメージは耳で想像することを心がけましょう。どういった様子のバランスで聴こえると、自分が理想とするイメージが伝わるかということを考えるのです。そして、それがちゃんと再現できているか、弾いた後きちんと自分の音を聴いてあげましょう。イメージ通りならOK、イメージ通りでないなら、どこが出っ張っているか、どこが凹んでいるかを注意深く観察する事が大切です。
などと言ってみるのは簡単ですが、これらを実行するのは極めて困難です。個人的にこのステップはおそらくピアノを弾く上で最も人間的ではない行為だと思います。
人間の脳は基本的にマルチタスクに向いていない仕組みを持っています。しかし、演奏中に次の音は待ってくれないので、絶え間なく次の響きを想像しながら実際に今鳴り響いている音を聴かなければなりません。その為、必然的にマルチタスクを強要されてしまいます。
全てを同時に行うのは大変だと思いますので、最初は耳で響きを想像する事から始めてみましょう。
想像のヒント
「そうはいっても、そもそも何をもって良い響きなのかがわからないよ。」と思う方もいらっしゃる方もいるでしょう。そこで、少しだけヒントをお伝えしたいと思います。
まずはこの二つのポイントを押さえてみましょう。
・全ての音がちゃんと聴こえてくるかどうか
・輪郭がはっきりしているかどうか。
前者はそこまで考えなくても実行できる事かとは思います。響きの中で聴こえない音一つでもあるといけません。まずは全ての音が聴こえてるかを意識してみましょう。
後者に関してはイラストや字などにおいても言えることかと思いますが、輪郭がはっきりしていないとどうしてもぼやけた印象になります。もちろんそういった響きを利用することもありますが、基本的には輪郭がはっきりしている方が音が鮮明に伝わります。
音楽の輪郭をはっきりする為にはやはりソプラノとバスがしっかり聴こえる必要があると思います。まずはソプラノのメロディがはっきりと綺麗に聴こえてくること、次に一番下で響き全体を支えているバスラインがしっかりしていること。この二つを心掛けると一気に演奏の明瞭度が上がります。西洋音楽をはじめ、和声、コードを決める一番の要因はバスになります。まずメロディとバスが調和しているかを確認し、その後内声を加えてバランスを取っていくのが良いでしょう。
それらが出来るようになったら、次は和声に目を向けてみましょう。
例えば、調性はとても重要になります。大まかなところでも長調の音楽と短調の音楽だと感じ方はまるで違うかと思います。調性ごとに適したバランスはごく僅かですが違いますので、注意深く聴いてみましょう。
また、和音の種類も重要です。例えば属七の和音や減七の和音などは独特の色合いをもっています。こういった和音は楽曲の中でも特に重要なポイントなどで用いられたりすることが多いので、属七や減七という事がよりしっかりと伝わるようなバランスで弾いてみるのが良いかと思います。
これらのポイントを一つずつクリアしていけば、綺麗な響きで弾けるようになります。焦らず一つずつ練習に取り入れてみてください!
おわりに
3回にわたってお話させていただいた演奏の極意、いかがでしたでしょうか?難易度の高い物もありますが、比較的すぐに取り入れられそうな内容もあるかと思います。演奏の際に難しいな〜と思う部分があれば、これらのヒントを参考に練習してみてくださると幸いです。また、今回ご紹介した以外にもとても役に立つ技術は様々です。もしご興味持ってくださいましたら、ぜひ体験レッスンにお越しいただけると幸いです!
次の記事:これだけはマスターしておきたい?ハノンとインベンション
佐々木 隆介 SASAKI RYUSUKE
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